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食・集・働・住が詰まった集合住宅

東京都西葛西にある「西葛西APARTMENTS-2」は、設計事務所、コワーキングスペース、ベーカリーを併設した集合住宅だ。オープンスペースでは地域交流の場となるマルシェも定期的に開催している。自らが事業主となり、企画・設計・運営に携わる駒田建築設計事務所の駒田剛司さん、駒田由香さんに、お話を伺った。


下吹越武人(以下.下吹越)──「西葛西APARTMENTS-2」はどのような経緯で計画されたのですか?
駒田剛司(以下.剛司)──私の母が葛西の出身だったので、ここの土地を相続したことがきっかけです。駐車場になっていたのですが、ここに何か建てれば仕事になるし、実績がつくれるかなと思い、僕たちのデビュー作として、敷地の半分を使って「西葛西APARTMENTS」(2000年竣工)を設計しました。ちょうど集合住宅が雑誌などで注目されていた時期でもあったので、用途は賃貸の集合住宅に決めました。現在、「西葛西APARTMENTS-2」が建っている土地はその後も20年近くずっと駐車場として使用していましたが、7、8年前から2人で計画を考え始めて、今度は自分たちの事務所が事業主となってやろうということになり、資金繰りもすごく大変な中で実現しました。
畠山かおり(以下.畠山)──建物のプログラムについて教えてください。
駒田由香(以下.由香)──プログラムとしては、1階はパン屋さんとカフェ、2階はコワーキングスペースと事務所、3、4階は賃貸住宅という構成になっています。はじめからオープンスペースをつくりたいという考えがあり、どうやって街とつなげて、外の人たちを中に引き込むかを考えました。4、5年前からカフェやパン屋を開くことを真剣に考えていましたが、調べれば調べるほどハードルが高いとわかりました。そこで、この辺で1番美味しいパン屋さんに、オーナーの顔も知らずに図面を持ってダメもとでお願いしに行ったのですが、「ここでカフェやパン屋をやるのはそんな甘くないですよ」と言われて断られました。しかし、その後に私たちのことを調べてくれて、実際にここに来てみたら結構良い印象だったらしく、1週間後に真剣に考えたいって連絡をくれました。そのゴンノベーカリーマーケット(以下.ゴンノベーカリー)さんから、「ワンフロア全部を使ってやりたいです」と言われたのをきっかけに1階は全て、人が集まったり食べたりする場所にすることに決めました。それで2階は働く場にして、建物自体は小さいけど、食べる・集まる・働く・住むという要素が全て詰まっていて、誰でも入ってこられる場所がコワーキングスペースや外廊下、屋上などに散りばめられるようにしようと考えました。
剛司──集合住宅の足元に店舗を計画する時は、だいたい集合住宅と店舗のアプローチを分けてしまうんですが、住民がアプローチする時に必ずパン屋さんの横を通ってほしかったので、階段室の場所は工夫しました。さらにこの階段室は風が抜けて、視線も上や下に抜けるので、プライベートとパブリックを明確には分けていません。

駒田由香

福岡県生まれ。一級建築士。駒田建築設計事務所取締役

駒田剛司

神奈川県生まれ。一級建築士。駒田建築設計事務所代表取締役


「西葛西APARTMENTS-2」の外観。建物の右手がオープンスペース「7丁目PLACE」


「西葛西APARTMENTS-2」の1 階平面図